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第13回 職場における腰痛③
~「安静」から“Stay Active”へ~

以前は、腰痛になったら「安静」を継続することが基本でした。しかし、現在は予防、治療の両面から世界的に安静にし過ぎることは勧められておらず、動けるようになったらなるべく動いて、できる範囲で日常生活を送る“Stay Active”が腰痛改善に効果的とされています。それは、安静のし過ぎは腰自体の不具合と腰痛恐怖回避思考を助長するという医学的根拠が蓄積されつつあるためです。
腰自体の不具合は、腰痛を理由とした活動性低下で背骨のスムーズな動きが失われ、背骨や背筋を含む運動器の柔軟性が低下し、体の組織が傷つきやすい状態となることで生じます。そのため、過度な安静は体の痛みをかえって生じさせたり、腰痛の再発・悪化の頻度を増やします。一方、腰痛恐怖回避思考とは、腰痛において自分の腰に対するネガティブな感情や痛みに対する不安感、恐怖感から過度に腰を大事にする意識や思考のパターンを指します。最近もしくは過去に経験した腰痛の支障度や、家族・周囲の人の腰痛による支障経験といったことが腰痛恐怖回避思考に強く関連する因子であることがわかってきており、逆に日常的に運動習慣がある人は腰痛恐怖回避思考が有意に低い傾向にあることもわかってきています。
腰痛の悪化や慢性化のリスクを低減するためには“Stay Active”を基本とし、さらに腰痛回避思考を強めないためにも適切な情報を得ることを心がけることが大切です。また、周囲の人や医療者は、腰痛を患った人に対して安心感を与え、安静を強調せず、“Stay Active”を勧めることも重要です。

図. 痛みの体験

  • (株)安川電機 統括産業医 宮﨑洋介

    専門分野:産業医学、産業保健
    資格:産業衛生専門医・指導医、社会医学系指導医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)

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